バトテニ 山吹 1
バトテニin山吹
1話目
千南、東亜を前提です。
キャラが死んだりしますので、ご注意を。
また、矛盾点やつっこみどころがあるかもしれませんが、温かい目で見守り下さい。
始まりの音は静かに鳴り響く―
覚えているのは、バス車内。
いつの間にか眠っていた俺の肩に千石がもたれかかり目を覚ました。
周りを見れば誰もが寝てる。
さっきまで騒いでいたのに、車内は静かで、薄暗かった。
前方を見れば、伴爺がいた場所に、まるでSF映画に出てくる悪役のような仮面をつけた人を見て、また意識が朦朧とする。
そのまま俺はまた訳のわからない眠りに襲われた。
―開始の音―
伴田の提案で男子テニス部全員で慰安旅行へ行くことになったのは卒業式より1ヶ月前のこと。
南の隣では千石が、お菓子を食べながら騒いでいる。
「亜久津先輩も来れれば良かったです」
「仕方ないよ壇くん、亜久津ってこういうの嫌いそうだし?」
当然ながら退部をした亜久津は今回の旅行には参加しなかった。
伴田が無理にでも亜久津を参加させなかったのは意外だったが、部員の多半数が亜久津がいると慰安にならない、というならば無理に参加させることもできなかったのが南の内心であった。
「けど、最後なんだしせっかくだから参加すれば良かったのになぁ」
太一の隣では、東方が太一と同じように進行方向に逆らい南たちの席に体ごと向けている。
「いいじゃんいいじゃん、今度卒業旅行とか言って無理矢理連れてこ!」
「卒業旅行じゃ俺たち参加出来ないじゃないですか」
南と千石の後ろでは、新渡米と喜多が二人で顔を出している。
ちなみに、千石の通路を挟んで隣では室町と錦織が座っていたが、あまり話には参加していなかった。
どうやら錦織は千石のお菓子の匂いに酔ったようだ。
「あーハハ、そうだねぇ…」
千石が困ったように頬をかきながら、南に助けを求める。
「まぁ今度、亜久津も誘って集まれるやつだけで遊べばいいだろ、なぁ太一」
亜久津を慕う壇は、今回彼が参加しないと知った部員の中で、目に見えて肩を落としていた。
南が提案を壇に投げ掛ければ、壇は目を輝かせ頷いた。
車内全体で笑いと話し声だけが充満する。
白い制服に身を包んだ、その誰もが部活のこと、全国のこと、勉強や昨日あったとりとめもない話をしていた。
そんな中、南は軽い眠気に襲われた。
話をしているのに意識が遠のき、瞼が落ちる。
「南、眠いのか?」
「今日のこと興奮して眠れなかったんでしょー」
東方の心配する声や、千石のふざけた口調にも、反応を返すことができなかった。
「ん…悪い、少し寝る」
千石のおやすみという声を聞く前に南の意識はなくなった。
「南、みなみっ」
肩を揺すられ目を覚ませば、目の前にいたのは東方だった。
自分がいる場所、時間がはっきりと思い出せず、重い頭を持ち上げ南が体を起こした。
少しの時間を要しやっと意識がはっきりしたが、自分があるべき状態と、現実との違いに違和感をおぼえる。
「どこだ…ここ」
「わからない、とにかく皆を起こそう」
今まで寝ていたバスの車内でないことだけは確かだった。
薄暗く、部屋を見渡せば真四角の部屋ということは把握出来た。
部屋全体に部員と思われる人間が横たわっている。
その一人一人に東方が肩を揺すりながら起こしている。
横に千石がいることに気付いた南は、東方と同じように肩を揺すって目を覚まさせる。
「ん…南?」
「起きたか…せんご…く?」
肩を揺すりながら気付いた違和感。
制服の白ランの首襟から僅かに見える無機質の黒。
「……っ」
疑うように自分の首元に触れれば、冷たく硬い何かが首を絞めていた。
「南、なに…それ?」
南のそれに気付いた千石も自分の首にある存在に気付く。
周りにも、目を覚ました部員たちが騒ぎ始めた。
「南、伴爺がいない」
部員を起こしに行っていた東方が南たちの元に戻り状況を確認した。
伴爺が…?
そう言おうとしたその時、南たちがいる対角線側にある扉が激しく開き、今しがた話に出てきた伴田がいつもの笑顔で部屋へ入った。
それと同時に電気が光々とつき、部屋の状態がやっとわかる状況となった。
部屋は真四角の部屋で、伴田が入ってきた反対側、つまり南たちの側の壁には一面に黒い布か、あるいはゴミ袋のようなものをガムテープで簡易的に作られているようであった。まるで光が入らないようになっているようで、それによって今の時間帯の把握ができなかった。
南は自分が腕時計をしていることを思い出し、左腕に目を落とす。
短針は11を過ぎていて、午前か午後か、とにかく11時過ぎというのは明らかだった。
伴田の後ろには、まるで軍人のような格好をした男が2人、綺麗に並んでついてきた。
部屋の電気がついてわかったが、伴田の立っている後ろには大きな黒い板―
黒板と思われるものがあり、その中央に伴田が、両端に軍人風情の男が1人ずつ立った。
皆が一様に伴爺、と呼び、今あるべき状態を聞き出そうと声を荒げるが、当の本人は終始笑顔を絶すことはなかった。
その反面両端にいる男たちは無表情で、それが伴田の笑みをおかしく演出しているようでもあった。
「静かにして下さい」
皆が騒いでいたにも関わらず、伴田の声が妙に響いた。
別段声を荒げた訳でも、叫んだ訳でもなかったのに、その声は今まで口を開いていた者を黙らせた。
「光栄にも皆さんは、選ばれたのですよ」
何に?
先程のように伴田に聞くことはなく周りと小さく囁き合う。
「バトル・ロワイアル、です」
一同に口をつぐんだ。
噂には聞いたことがあった。
BR法だ。
誰も何も言えず、伴田は話を進めた。
誰も何も口をすることなく、伴田の話は順調に進んだ。
何故選ばれたのか、経緯。
そして細かいルール説明。
「大まかに言えば3日以内に誰か1人になるまで生き残ればいいのですよ」
周りがざわついた。
それはつまり―
「そう、皆さんで殺し合いをして頂きます」
ようやくはっきりとした単語が出て、全員が焦りを見せた。
誰もが、伴田は何か、自分達の考えていることと違うことでも言っているのでは、と小さな期待があった。
「何か質問があれば手を挙げて発言して下さい」
その台詞に、南の隣にいた千石が手を挙げた。
南は驚き、反対側にいた東方と目を合わす。
「はい、千石くん、何でしょう」
まるで授業中に生徒を指名するように、伴田は千石を指し示した。
部員全員が千石に視線を送る。
視線の中千石が静かに立ち上がった。
「やりたくない、その時はどうなるのかな?」
「ダメですね、絶対参加です」
「俺は死にたくないよ、だから、家に帰して欲しいんだけどな」
立ち上がっている千石を見上げ南は、何を言い出すのかと思案する。
伴田は少し考えた素振りを見せ、結論付けた顔をし、片手をあげる。
手の先には、小さな銃。
本当はいけないんですがねぇ、とボソリと呟く。
「ならここで死にますか?そうすればすぐにでも家に帰れますよ」
千石は目を見開き、怯えからか、怒りからか、肩を震わせた。
「…ふざけんなっ…!!」
「千石…っ!!」
今にも伴田に殴りかかろうとする千石を、南と東方は抑えつけた。
伴田は微動だにせず微笑んでいるが、両隣の男は2人とも銃の標準を千石に合わせている。
「落ち着け千石!」
「何でだよっ…!いつもみたいにっ……冗談って言ってくれよ………伴爺…っ」
強く響いていた言葉も、最後の方は小さくなって、2人がかりて抑えていた体は逆に2人に支えられるように足を崩した。
南と東方は千石に落ち着け、と宥める。
その状態を見届け伴田は男たちに銃を下ろすよう指示した。
「では、皆さん何もないようなので、そろそろ始めましょうか」
そう伴田が言うと、入ってきた扉からガラガラとたくさんの荷物が入ったカバンが運ばれてきた。
先程の説明によれば中には食料や地図、支給武器が入っているはずである。
「今回は1年から3年までいますからね、平等に名前順でいきましょうか」
1番、亜久津仁――
教室がざわついた。
ここにいるのはバスに乗っていた部員だけのはずだった。
南が教室を見渡せば、南とは反対側の角に、亜久津はいた。
全員がいたことに気付かず、名前を呼ばれ立ち上がった亜久津を見上げていた。
亜久津が1歩、前へ出る。
「亜久津先輩っ!!」
人を掻き分け、檀が亜久津の側へ近寄った。
「嫌です…!亜久津先輩!!行っちゃダメです…っ」
亜久津が何か言おうと、壇に向き直ろうとした時、男の1人が叫んだ。
「モタモタするな!早く来い!」
亜久津は何も言わず、壇の頭に手を置き、また歩き出した。
急に隣の東方が立ち上がり、南は驚いた。
離れていた亜久津の側へ、大股に歩き、腕を掴んだ。
「っ……」
「亜久津…っ」
千石の時のように反応出来ず、南はただ2人の後ろ姿を見るだけだった。
腕を掴まれた亜久津は、東方を一瞥し、伴田の元へと向かった。
荷物の山から1つカバンを渡され、亜久津は部屋を後にした。
亜久津が部屋から完璧に姿を消して、東方は南たちの元へ戻り腰を下ろした。
「くそっ…」
拳を床に叩きつけ、彼の悔いた声は教室に小さく響いた。
東方を良く知る南にとって、彼の行動は信じ難かった。
乱暴な態度は、東方には似合わなく、非現実さが南を襲う。
「2番――」
伴田が何もなかったように1人、また1人と呼び続けた。
不意に南の手に何かが触れた。
「っ?」
「あ…メンゴ」
隣にいた千石が南の手に自分の手を被せていた。
「なんか…怖くって、さ」
「あぁ、そうだな」
重なる手の温度に安堵する。
先程の亜久津が東方を見た時のことを思い出す。
口を動かしただけのように見えたが、確かに亜久津は「またな」と言った。
また。
会えるかどうかもわからない。
生きれるか、死ぬのもいつかわからない。
この数分後に、この最も近くにいる千石と別れ、次に会えるのはいつなのか。
生きて会いたいと、南は願い自分の名前が呼ばれるのを、ただ待った。
南が目を覚ましたのは午前6時過ぎだった。
名前を呼ばれた後、部屋を出てがむしゃらに走り、どこかもわからず木に囲まれた所で一息ついた。
何も考えずに走っていたため、腰を下ろしてようやく思考が開始した。
周りが暗い、ということは今は午前だということ、これからどうすべきか、考えながら眠ってしまっていたらしい。
「喉…渇いたな」
全力で走り、そのまま眠りについたため、冬とはいえ喉が渇きをおぼえていた。
渡されたカバンを覗き、水を取り出し一口飲む。
冷たい水が喉を通った。
カバンにある物を確認し、説明にはなかった物が1つあった。
「ナイフ…か」
大きさとしては手頃な、サバイバルナイフだった。
保護具を取り、刃をマジマジと見る。
「殺し合い…」
あまりにも現実味がなく、頭にはただ、どうすればいいかが巡っていた。
とにかく、部員を1人でも多く、探そうと結論付け、立ち上がろうとしたその時。
銃声が一発、鳴り響いた。
【死亡者0…残り32人】
1話目
千南、東亜を前提です。
キャラが死んだりしますので、ご注意を。
また、矛盾点やつっこみどころがあるかもしれませんが、温かい目で見守り下さい。
始まりの音は静かに鳴り響く―
覚えているのは、バス車内。
いつの間にか眠っていた俺の肩に千石がもたれかかり目を覚ました。
周りを見れば誰もが寝てる。
さっきまで騒いでいたのに、車内は静かで、薄暗かった。
前方を見れば、伴爺がいた場所に、まるでSF映画に出てくる悪役のような仮面をつけた人を見て、また意識が朦朧とする。
そのまま俺はまた訳のわからない眠りに襲われた。
―開始の音―
伴田の提案で男子テニス部全員で慰安旅行へ行くことになったのは卒業式より1ヶ月前のこと。
南の隣では千石が、お菓子を食べながら騒いでいる。
「亜久津先輩も来れれば良かったです」
「仕方ないよ壇くん、亜久津ってこういうの嫌いそうだし?」
当然ながら退部をした亜久津は今回の旅行には参加しなかった。
伴田が無理にでも亜久津を参加させなかったのは意外だったが、部員の多半数が亜久津がいると慰安にならない、というならば無理に参加させることもできなかったのが南の内心であった。
「けど、最後なんだしせっかくだから参加すれば良かったのになぁ」
太一の隣では、東方が太一と同じように進行方向に逆らい南たちの席に体ごと向けている。
「いいじゃんいいじゃん、今度卒業旅行とか言って無理矢理連れてこ!」
「卒業旅行じゃ俺たち参加出来ないじゃないですか」
南と千石の後ろでは、新渡米と喜多が二人で顔を出している。
ちなみに、千石の通路を挟んで隣では室町と錦織が座っていたが、あまり話には参加していなかった。
どうやら錦織は千石のお菓子の匂いに酔ったようだ。
「あーハハ、そうだねぇ…」
千石が困ったように頬をかきながら、南に助けを求める。
「まぁ今度、亜久津も誘って集まれるやつだけで遊べばいいだろ、なぁ太一」
亜久津を慕う壇は、今回彼が参加しないと知った部員の中で、目に見えて肩を落としていた。
南が提案を壇に投げ掛ければ、壇は目を輝かせ頷いた。
車内全体で笑いと話し声だけが充満する。
白い制服に身を包んだ、その誰もが部活のこと、全国のこと、勉強や昨日あったとりとめもない話をしていた。
そんな中、南は軽い眠気に襲われた。
話をしているのに意識が遠のき、瞼が落ちる。
「南、眠いのか?」
「今日のこと興奮して眠れなかったんでしょー」
東方の心配する声や、千石のふざけた口調にも、反応を返すことができなかった。
「ん…悪い、少し寝る」
千石のおやすみという声を聞く前に南の意識はなくなった。
「南、みなみっ」
肩を揺すられ目を覚ませば、目の前にいたのは東方だった。
自分がいる場所、時間がはっきりと思い出せず、重い頭を持ち上げ南が体を起こした。
少しの時間を要しやっと意識がはっきりしたが、自分があるべき状態と、現実との違いに違和感をおぼえる。
「どこだ…ここ」
「わからない、とにかく皆を起こそう」
今まで寝ていたバスの車内でないことだけは確かだった。
薄暗く、部屋を見渡せば真四角の部屋ということは把握出来た。
部屋全体に部員と思われる人間が横たわっている。
その一人一人に東方が肩を揺すりながら起こしている。
横に千石がいることに気付いた南は、東方と同じように肩を揺すって目を覚まさせる。
「ん…南?」
「起きたか…せんご…く?」
肩を揺すりながら気付いた違和感。
制服の白ランの首襟から僅かに見える無機質の黒。
「……っ」
疑うように自分の首元に触れれば、冷たく硬い何かが首を絞めていた。
「南、なに…それ?」
南のそれに気付いた千石も自分の首にある存在に気付く。
周りにも、目を覚ました部員たちが騒ぎ始めた。
「南、伴爺がいない」
部員を起こしに行っていた東方が南たちの元に戻り状況を確認した。
伴爺が…?
そう言おうとしたその時、南たちがいる対角線側にある扉が激しく開き、今しがた話に出てきた伴田がいつもの笑顔で部屋へ入った。
それと同時に電気が光々とつき、部屋の状態がやっとわかる状況となった。
部屋は真四角の部屋で、伴田が入ってきた反対側、つまり南たちの側の壁には一面に黒い布か、あるいはゴミ袋のようなものをガムテープで簡易的に作られているようであった。まるで光が入らないようになっているようで、それによって今の時間帯の把握ができなかった。
南は自分が腕時計をしていることを思い出し、左腕に目を落とす。
短針は11を過ぎていて、午前か午後か、とにかく11時過ぎというのは明らかだった。
伴田の後ろには、まるで軍人のような格好をした男が2人、綺麗に並んでついてきた。
部屋の電気がついてわかったが、伴田の立っている後ろには大きな黒い板―
黒板と思われるものがあり、その中央に伴田が、両端に軍人風情の男が1人ずつ立った。
皆が一様に伴爺、と呼び、今あるべき状態を聞き出そうと声を荒げるが、当の本人は終始笑顔を絶すことはなかった。
その反面両端にいる男たちは無表情で、それが伴田の笑みをおかしく演出しているようでもあった。
「静かにして下さい」
皆が騒いでいたにも関わらず、伴田の声が妙に響いた。
別段声を荒げた訳でも、叫んだ訳でもなかったのに、その声は今まで口を開いていた者を黙らせた。
「光栄にも皆さんは、選ばれたのですよ」
何に?
先程のように伴田に聞くことはなく周りと小さく囁き合う。
「バトル・ロワイアル、です」
一同に口をつぐんだ。
噂には聞いたことがあった。
BR法だ。
誰も何も言えず、伴田は話を進めた。
誰も何も口をすることなく、伴田の話は順調に進んだ。
何故選ばれたのか、経緯。
そして細かいルール説明。
「大まかに言えば3日以内に誰か1人になるまで生き残ればいいのですよ」
周りがざわついた。
それはつまり―
「そう、皆さんで殺し合いをして頂きます」
ようやくはっきりとした単語が出て、全員が焦りを見せた。
誰もが、伴田は何か、自分達の考えていることと違うことでも言っているのでは、と小さな期待があった。
「何か質問があれば手を挙げて発言して下さい」
その台詞に、南の隣にいた千石が手を挙げた。
南は驚き、反対側にいた東方と目を合わす。
「はい、千石くん、何でしょう」
まるで授業中に生徒を指名するように、伴田は千石を指し示した。
部員全員が千石に視線を送る。
視線の中千石が静かに立ち上がった。
「やりたくない、その時はどうなるのかな?」
「ダメですね、絶対参加です」
「俺は死にたくないよ、だから、家に帰して欲しいんだけどな」
立ち上がっている千石を見上げ南は、何を言い出すのかと思案する。
伴田は少し考えた素振りを見せ、結論付けた顔をし、片手をあげる。
手の先には、小さな銃。
本当はいけないんですがねぇ、とボソリと呟く。
「ならここで死にますか?そうすればすぐにでも家に帰れますよ」
千石は目を見開き、怯えからか、怒りからか、肩を震わせた。
「…ふざけんなっ…!!」
「千石…っ!!」
今にも伴田に殴りかかろうとする千石を、南と東方は抑えつけた。
伴田は微動だにせず微笑んでいるが、両隣の男は2人とも銃の標準を千石に合わせている。
「落ち着け千石!」
「何でだよっ…!いつもみたいにっ……冗談って言ってくれよ………伴爺…っ」
強く響いていた言葉も、最後の方は小さくなって、2人がかりて抑えていた体は逆に2人に支えられるように足を崩した。
南と東方は千石に落ち着け、と宥める。
その状態を見届け伴田は男たちに銃を下ろすよう指示した。
「では、皆さん何もないようなので、そろそろ始めましょうか」
そう伴田が言うと、入ってきた扉からガラガラとたくさんの荷物が入ったカバンが運ばれてきた。
先程の説明によれば中には食料や地図、支給武器が入っているはずである。
「今回は1年から3年までいますからね、平等に名前順でいきましょうか」
1番、亜久津仁――
教室がざわついた。
ここにいるのはバスに乗っていた部員だけのはずだった。
南が教室を見渡せば、南とは反対側の角に、亜久津はいた。
全員がいたことに気付かず、名前を呼ばれ立ち上がった亜久津を見上げていた。
亜久津が1歩、前へ出る。
「亜久津先輩っ!!」
人を掻き分け、檀が亜久津の側へ近寄った。
「嫌です…!亜久津先輩!!行っちゃダメです…っ」
亜久津が何か言おうと、壇に向き直ろうとした時、男の1人が叫んだ。
「モタモタするな!早く来い!」
亜久津は何も言わず、壇の頭に手を置き、また歩き出した。
急に隣の東方が立ち上がり、南は驚いた。
離れていた亜久津の側へ、大股に歩き、腕を掴んだ。
「っ……」
「亜久津…っ」
千石の時のように反応出来ず、南はただ2人の後ろ姿を見るだけだった。
腕を掴まれた亜久津は、東方を一瞥し、伴田の元へと向かった。
荷物の山から1つカバンを渡され、亜久津は部屋を後にした。
亜久津が部屋から完璧に姿を消して、東方は南たちの元へ戻り腰を下ろした。
「くそっ…」
拳を床に叩きつけ、彼の悔いた声は教室に小さく響いた。
東方を良く知る南にとって、彼の行動は信じ難かった。
乱暴な態度は、東方には似合わなく、非現実さが南を襲う。
「2番――」
伴田が何もなかったように1人、また1人と呼び続けた。
不意に南の手に何かが触れた。
「っ?」
「あ…メンゴ」
隣にいた千石が南の手に自分の手を被せていた。
「なんか…怖くって、さ」
「あぁ、そうだな」
重なる手の温度に安堵する。
先程の亜久津が東方を見た時のことを思い出す。
口を動かしただけのように見えたが、確かに亜久津は「またな」と言った。
また。
会えるかどうかもわからない。
生きれるか、死ぬのもいつかわからない。
この数分後に、この最も近くにいる千石と別れ、次に会えるのはいつなのか。
生きて会いたいと、南は願い自分の名前が呼ばれるのを、ただ待った。
南が目を覚ましたのは午前6時過ぎだった。
名前を呼ばれた後、部屋を出てがむしゃらに走り、どこかもわからず木に囲まれた所で一息ついた。
何も考えずに走っていたため、腰を下ろしてようやく思考が開始した。
周りが暗い、ということは今は午前だということ、これからどうすべきか、考えながら眠ってしまっていたらしい。
「喉…渇いたな」
全力で走り、そのまま眠りについたため、冬とはいえ喉が渇きをおぼえていた。
渡されたカバンを覗き、水を取り出し一口飲む。
冷たい水が喉を通った。
カバンにある物を確認し、説明にはなかった物が1つあった。
「ナイフ…か」
大きさとしては手頃な、サバイバルナイフだった。
保護具を取り、刃をマジマジと見る。
「殺し合い…」
あまりにも現実味がなく、頭にはただ、どうすればいいかが巡っていた。
とにかく、部員を1人でも多く、探そうと結論付け、立ち上がろうとしたその時。
銃声が一発、鳴り響いた。
【死亡者0…残り32人】




